ぽてちって飽きない

ぼんぼやーじゅ

麒麟にの・る

 

ひたすらに思いのまま書きなぐった感想

行間を妄想で補っています!fusetterで1月6日に投稿したものにTwitterで呟いたものを挿入、加筆修正(5月18日はてブロに再投稿)した。(ブログお勉強中にて効果を使いまくっている)

台本が手元にないので台詞はかなりうろ覚え…*1

 

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なんやかんや

 

まず

信行は「芝居が上手い」んだよな。これが信行の生き様を表しうる言葉だと思う。

星が好きで(城主の兄を支える)天文学者を目指していた日の信行は信長殺した。左馬助に向かって「俺が織田信長だ」と名乗りを上げたように、彼は信長としての人生をずっと歩んできた。

でもどんなに信長であろうとしても、本当の信長にはなれないと思っていたんじゃないか。愛される条件を持ち合わせて生まれて、皆から好かれいつも選ばれる兄とは正反対に、根底では誰からも愛されず、選ばれない人間だったと自分を評価している。

新たな家督織田信行として生きていくことも出来たのに、何故信長の代理として生きていくことに決めたのか。織田家嫡男の織田信長から逃げた信長と、彼の歩むはずだったレールを歩く信行。信行は信長が本来なって欲しいと望んだ織田家継承者ではなくて織田信長という役割を担うことを選んだ。

つまりは織田信長として天下人になることを目指し、芝居を打ってきた人生だった。

また信行は勝家に「俺はお前の強さが好きだ」と強さを価値の基準にしているし、蘭・丸によく「お前たちも強く育て」「弱くちゃダメだ、強くなるんだ」と言うように強さに固執している。きっと自分に向かって言ってるんだろう。蘭が末期に言ったように信行は本当は弱かった。

雪が一面に降り積もった日のように何も音が聞こえない時って、逆に鼓動や呼吸などの自分の発する物音がうるさく聞こえる。信行の「静かで静かで、うるせえな」ってそういう感情なんじゃないか。今まで押し殺して見てこないようにしていた自分の内面に否が応でも向き合わざるを得ない感覚。

弱いから孤独な自分を飾り、北極星を頼りに必死に歩いてきた。

そうやって信行が幾度となく眺め、道標にした『北極星』は信長だった。変わらず空にあり続け、指針となるような星。信行はよく金平糖北極星に重ねて見るのだけど、二度ほど取り零すシーンがあって、それが信行にとって大きな転換になるシーンかなと思う。記憶が正しければ、長政が離反した時と信長が亡くなった時。

 

史実を絡めて

本物の信長が逃げたのは初夜の次の朝ならばまだ尾張平定すら済んでいないので、『信長』としての功績を作ったのは全て信行だと仮定すると、兄である信長が「生まれた順が間違いだった」「こいつが嫡男だったら」と思うのも頷ける才覚。信長が捨てたものを拾って磨き上げ、ここまで信長という名を高めた。正直現代の人間が想像する織田信長は信行のことになる。

この話は1567年*2がベースであるらしいけど、この少し前に信長(信行)は花押に麒麟を意味する文字を使用している。かの有名な天下布武の花押を使用したのもこの1567年頃。並々ならぬ天下人への執着を感じる。る変塾にて花押の話が少しあったのでちょっと関係あるんじゃないかなあと思っているんだけど、兄とともに見た麒麟のしっぽをずっと追い求めているのかな。

そして安土城は唯一〝天守閣〟ではなく、〝天主閣〟と称していた城であり、きりんさんが安土城の信行の元に吸い寄せられたのはこのことも関係ありそうだと思っている。

あと顕如が破れなかった結界はおっさんの「無理やり結界の罠で捕まえて~」という発言的に信行が張っていたものだと思うけど、あれは天文道かな?

 

帰蝶と信行

そこまで信行が『天下人』に拘る理由として、帰蝶の願い(野望?)がある。

信行は帰蝶に惚れているけど本来この結婚は政略結婚で、信行には帰蝶を天下人の妻にするという願いを叶えてあげることしか兄に勝る結びつきを見いだせなかったのかもしれない。しかも帰蝶は本物の信長を好いていて、中盤までは信行のことも『天下人の妻』になるための駒のひとつとしか捉えていなそうだったし。わざわざ「天下も女も俺の手の内か、なあ我が妻帰蝶」と言葉にするところがいじらしい。

信行が初めて帰蝶に想いを告げる時、兄への対抗心からか「あの男の方がよかったなんて言わせない」と本心を口にする。その後に続く「気づきもしませんよね、麒麟にも誰にも、俺は嫌われる運命だ」という台詞が切ない。長政に離反されてから誰も信じない、家臣団も離れ仲間もいらない、孤独を介さないように振舞っていたのに、帰蝶に零したこの台詞からは今まで隠していた悲しみが垣間見えた。そりゃ帰蝶も心が揺らぐ。

帰蝶の説明文に

信長(信行)とは同志のような関係

と書いてあったけれど、彼らは天下を目指す同志だけではなく、信長を失い、その面影を探している同志でもあったのではないかと思った。

 

本来の信行くん

元々気が短いと言われていた信行だけれど、唯一の友長政に裏切られてからは尚更苛烈になる。

でも本当の信行は愛する兄と惚れた女性の結婚を祝える人間なんだわ。「兄さんはこのお城のお殿様になるから、僕は星を調べる大人になるよ」の台詞からしても、信行は城主となる信長を支えたかったんだと思う。何もかも初めから持ち合わせていて恵まれていた兄はそれを「欲しくない物ばかり手にした」と捨てて逃げてしまった。

裏切られた、捨てられたと思ったのだろうか。

でも光秀としてまた城に舞い戻り、自身の天下取りに加勢してくれる兄を心の中では認めていた。それこそ秀吉が不穏に感じるほどに。

パンフで三者*3が語っていたように、わたしも責任がある方が落ち着くというか、先を見据えられるというか、責任から逃げること自体がストレスなタイプなので信行の方に感情移入してしまうけれど、自分より優れている(と思っている)弟がいて、自分の存在自体が彼にとって障害であったならさぞつらいだろうとは思う。特に愛していればこそ、自分のことをより一層否定してしまうのかな。

きりんさんが見えた信長に信行が逆上したのは「麒麟を求める俺様を嘲笑って、貴様は黙っていたのか」「麒麟はとっくに自分を選んでいるのにそれを欲しがるなんて信長は哀れな馬鹿だなあって!」「貴様!俺様に黙ってたろ!」という点だったので、きりんさんが見えていることではなく見えていることをずっと黙っていたことが裏切りに感じたんじゃないかなあ、と。

1幕終わりにて信行は「あの日見た夢が俺を動かす」ことに対して、信長は「あの日見た夢が俺を責める」と歌う。信長は争いが嫌いだったので麒麟が見えること自体拒みたくて仕方がなかったんだろう。その権利すらまた「あいつの方が向いていたんだ」と譲ろうとするんだから。

蘭が「弱い俺が悪い」と言って自ら命を絶つけれど、それに少なからずショックを受けているのが人間らしいなと思った。強さこそが正義で、弱いから死んでいくと言い聞かせているようだ。

 

家臣団との絆

少なからずウラウラ*4してた頃は家臣団との間に絆はあったと思うし、最後まで切れなかった絆も幾筋か見受けられた。特に命を懸けて守ろうとした帰蝶と、死なせないと断言した秀吉。中国に行く前、「これを最後にあなたを見限る」と言った秀吉に「今が最後でもいいんだぞ」と信行は返すけれど、結局秀吉は見限らなかった。信行の本心を見抜いていたからだろう。天下と信行を天秤にかけ、信行を取ったところに感動した。

秀吉が本心から信行のことを好いているところが私的にとてもよかった。登用してもらい、生まれに関係なく取り立ててもらった恩はずっと忘れていないと思う。あなたも死なせないという秀吉の真っ直ぐな目。人たらしであったことが十分伝わってくる秀吉だった。竹中がきりんさんを見たことがあると話した時、「その話は信長様にはするな」とやんわり口止めしていた。恐らくその話を口外すれば、竹中の命はなくなってしまったからだろう。また、三成が信長に裏切りを疑われて斬られそうになった際に「こいつは俺が初めて頂いた家臣です。信長様が与えて下さった宝です」と庇うところは本当にかっこいい。この秀吉が亡くなった後、三成が豊臣家のために奔走する理由が分かる。

そして秀吉には野心が欠かせない*5と思っている。野心がなければあそこまで駆け上がってこれない。左馬助を斬った後、麒麟の鳴き声を聞いた描写は鳥肌が立った。

このきりんさんは家康が連れていたきりんさんと同一なのかな?

 

兄弟

きりんが二人に見えた理由は、きりんさんがポンコツだからではなくて、兄弟で手を取り合えたなら天下を取れたってことなんだろうなと思いながら観た。おっさんも「兄と私が同じ運命を歩んでいたからかもしれません」と述べていたことからもそう感じられる。

どちらかが天下取りになるのではなくて、二人の手で天下を取る。片方が欠けてはいけない。信行には戦事の才があり、信長には政事の才があった。

それをきっと信行は元から認めていたのだろう。信長が楽市楽座や関所の撤廃を進言した時に、信行は素直に聞き入れ、「少しは役に立つらしいな。俺が一刻も早く天下を取れるよう、手助けしろ」と受け入れる。その時に信長がすごく嬉しそうな顔をしていたのが印象的だった。

だからきりんさんに「お前、あいつに捕まってやってもらえないかな。俺の弟に。で、あいつに天下取らせてやれねえかなーって」とお願いしてしまう。大切な弟に頼られた訳でしょ。俺より才能があって、俺がいたらあいつの邪魔になると家督を譲った程の弟の天下取りの願いに自分が加担できるのかと思ったら、そりゃあ嬉しい。やっと障害から支えになったと思ったわけだから。

「信行が俺より先に生まれてたらどんなによかったかって考えただろう。俺がいない方が、皆にとって、織田の家にとっていい」と思い詰めた末に信長は出奔したが、信行には信長がいなくてはいけなかった。二人でなければ天下は取れなかった。

信長は信長でも光秀の影武者でもなくなった後、信行の兄であることを選び、今一番困っている信行の元に駆けつけた。何者でもなくなった信長にとっての北極星信行の兄であることだったんだな。これが自分と誇れること。

自分が捨てた、そして信行に押し付けた形になってしまった信長の名を返してもらった後、信長は全てを背負って元より死ぬ気だった。信行がもう何にも縛られないように。

(追記)元は死ぬ立場が逆だったと聞いて驚いた。信長の名を背負って死んでいく弟に信長は何を思うのだろう。下に兄弟がいる身としては、信行が生きていてくれてよかったと強く思う。信長に対しての救い。

一方、信行は信長という道標を失って、もう何を頼りに歩けばいいのか分からなくなる。

兄を抱き締め、声を押し殺して泣くのがつらくてもらい泣きした。つらい時でも声を上げないんだなあ。力を求め、求められた男の涙だった。

何者でもなくなった後、信長が最期に遺した「お前は好きな星だけ見てろ」という言葉通りに天文学者にはならなかったんだと思ったが、あれは信長が城主になった際の夢だったからかなあ。もう見えなくなった麒麟に優しく話しかける信行に、本当はこのような気の優しい青年だったんじゃあないかと思いを馳せて、じんわりした。自分の人生を振り返った際に「オレは、俺」と言えるように。

最期の星空のシーンでマントを外しているのがいいな。マントという信長の役目から解き放たれて、お互いに織田家家督継承者ではなく、兄と弟、ふたりの兄弟である描写が美しかった。あんなに純朴に笑える未来もあったのかな、って切なくもなる。

 

浅井夫婦尊い

史実で浅井長政がとても好きなので、個人的な感情が入りまくっていますが、それを差し引いても素晴らしい浅井夫婦だったと思います。感極まる演技だった。長政の話をにこにこと聞いているお市は本当に幸せそうで、可憐だった。

尊い夫婦だ〜〜!

長政が朝倉を選んだ理由を「代々仕えている家臣に信長の妹であるお市が責められないため」と解釈するか、と歓喜した。ちょっとにやついちゃう。なるほどな。確かにだ。

信行が何故長政にだけ心を開いていたのか。長政はお喋りで、星に詳しくて、昔の兄の姿を長政に重ねていたのではないかなあ。そして蘭・丸には昔の自分を重ねてそう。「弱くちゃダメだ、強くなるんだ」ね。

長政が朝倉方につくことを決めあぐねている際、そなたに聞かせる話は無いと遠ざけられた後の悲しそうな返事と、思い直して「お市」と呼んだ際に嬉しそうに返事するトーンがはっきりと違うのが好きだ。たった「はい」の一言でも心情がありありと伝わる。

お市の言葉を遮って言う「浅井長政の、この世でただひとり愛した人だ」の純粋な愛情に心が揺れる。この夫婦も元々は政略結婚だもんね。

長政を失い、仇討ちを心に誓ったお市

「あら私ったら随分と饒舌で…仕方ありませんわね。お喋りな長政様は、もうおられないのですから」

からの高笑い、とても悲痛で泣いているようで、光を失い影の中に消えていくお姿がまさにお市の心情を表しているみたいだった。兄の狂った笑い声とは違うと思っていたけど、もしかしたら信行も心の中では同じように悲痛に叫んでいたのかもしれない。信行があの笑い方をし始めたのも、長政が離反してからだし。

復讐への手掛かりに正親町天皇に抱かれようとするお市の耳に何かが聞こえた気がしたのだけど、「どなたかの声が聞こえたような……空耳ですね。あんまり静かなものだったから…」と言って振り切る姿に泣いた。

お喋りな長政様はもういない。

「静かで静かで、うるせえな」に少しかかっているような気がする。長政はきっと復讐などやめろと止めたのだろうけど、もうこの世にはいないから静寂だけがただそこにあったんだなあ。切ない。

信行の温度のない眼が好きなんだけど、長政の隣にいた頃は可憐だったお市が、復讐を誓い心を殺した時の熱がすっと消え去った眼を見て、ああ兄妹だなと思った。でも二人とも愛で氷解するのだけど、その熱の差がよかった。

滑り落ちる小刀と金平糖

 

正親町天皇

人間らしいのに人間であることを認めてもらえない正親町天皇

とても色っぽいのにどこか埋められない影があって、望むもの全てが手に入るだろうに満ち足りていないような、人生にちょっとした諦観を感じさせる。きりんさんのことは見えはしないけど気配は感じているようだ。

天上人であり全て赴くがまま、まさに現世が極楽状態なのに死後極楽にいけるかどうか気にするってあまりにも切ない。現人神なので神そのものなんだけど、じゃあ天皇は何を頼り何に救いを求めればよかったんだろうね?自分だけは極楽に行くことを拒まれる。

結局は天皇も人間であって、「僕は人じゃない存在から抜け出せない。こんなにも人間らしいのに」誰にも救ってもらえず、孤高であり、孤独なのだな。神という立場に共感し得る人間はいないから。

この世の全てを握っているのに賽で物事を決めるのも、自分ではない何かに縋っているように見えてしまう。

丸が刺し殺されたところの演出、すごくいいわ。初見、息を飲んだ。

丸が許可なく賽を手に取った瞬間、すっと笑みが顔から抜け落ちたから、ああこれはやばいなとは思っていたけど、視覚的にとても衝撃のあるシーンだった。丸の赤い着物が盤の上に広がって美しくすらある。

「浅井 朝倉 本願寺 君の御旗の下に」の歌い方、好き!!!辻本さん本当に気品高い、上品な色気がずるい…!

 

光秀と煕子の話

婚姻前に煕子が疱瘡にかかってしまったため、代わりに妹が嫁ぐことになったが、光秀は変わらず煕子を嫁に迎えることを選んだという逸話、好きなので採用してくれて本当によかった。史実は疱瘡なんだけど、跡が残ったとされる左頬の方だったね!ほっぺ!

頬に触れる優しい手、「煕子がいい」と告げるまっすぐな声。最高でした。かっちに愛される男であったと思います。神永くんの声は深くて柔和で、とてもいい声をしているなあと色んな舞台で聞く度に思う。*6

 

※とりあえず

すごくロスです!!!本当に!!!

年が明けても「俺の年末──終わっちゃった」って気分で物憂げでした。正直ここまでロスるとは思わなんだ……。

でも2部*7で心の底から笑い倒してすっきりした気持ちで帰ることが出来るから本当にデトックスのような作品だと思う!幸せな年末をありがとう!!!!

(追記)8月、小林且弥さん演出舞台、めちゃくちゃ楽しみです。*8

 

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*1:配信閲覧して編集しました

*2:稲葉山城の戦いで義兄斎藤龍興に勝利し、稲葉山城改め岐阜城に拠点を移した。

*3:平野良さん、安西慎太郎さん、赤澤ムックさん

*4:この世は私のためにある。

*5:映画刀剣乱舞の秀吉が野心満々で最高に好きでした。

*6:あんスタの推しでもある。

*7:とんでもねえエンターテインメントでした。危うく1部の涙が一気にぶっ飛んでいって、観劇の記憶が忘却の彼方に消え去るところだった。

*8:延期になっちゃったけど、ずっと待ち続ける